私の研究テーマは、大学時代に出会ったとある先生の博士論文に大きな影響を受けています。そこにあった事実は、物理学で出てくる「オームの法則」が、生物(植物)を介した物質交換「フィックの第一法則」と同じ形をしている、というものでした。このような「類似性(アナロジー)」は、1960年代に法則化されており、この分野では広く知られていることです。しかし当時学生だった私は、「植物を物理法則で表現することができるなんて!!」と純粋に感動したものです。

このことが、物理学と生物学に限らず世の中のあらゆる専門分野を俯瞰し、統合する「学際研究」への興味にも繋がっています。

1.森林への窒素沈着量の推計に向けた変質メカニズムの解明

地球規模で問題となっている大気中の反応性窒素の生態系への過剰負荷(大気沈着)は、自然の窒素循環を乱して富栄養化をもたらし、生物多様性損失の驚異となっています。大気へ放出された大量の反応性窒素が生態系へ負荷される主なプロセスの中で、ガス状および粒子状の反応性窒素の森林への「乾性沈着」プロセスは極めて複雑であり、そのメカニズムが解明されていないことから、窒素負荷による生態系影響アセスメントを困難なものにしています。
堅田研究室では、国土の約7割を占める森林へのガス・粒子状反応性窒素の乾性沈着過程(沈着・化学反応・植物の生理的応答など)を再現できる精緻な大気-植生-土壌多層モデル(SOLVEG)を開発し、それを用いた数値シミュレーションによって支配的要因(気象、大気化学、樹冠の季節変化など)を明らかにすることで、乾性沈着量を正確かつ簡易に推計する手法を確立します。

<関連プロジェクト>
・科研費基盤研究(B)(一般)「生態系への窒素負荷評価のためのガス・粒子状反応性窒素の沈着メカニズムの解明(研究代表者:東京農工大学 松田和秀准教授)」

SOLVEG基本構造
SOLVEG粒子沈着

2.大気沈着の空間的異質性と森林窒素飽和の進行メカニズムの解明

大気中の反応性窒素の森林生態系への過剰負荷による「窒素飽和」は、森林の炭素蓄積機能にも影響を及ぼします。しかし、窒素負荷をもたらす大気沈着過程のうち「乾性沈着」と「霧水沈着」は、同一集水域でも空間的ばらつきが極めて大きく、従来行われてきた限られた1地点での観測から窒素負荷の影響を評価することは困難です。
堅田研究室では、特に源流域から窒素飽和が進んでいる天然林の同一集水域に注目し、大気・土壌・植生・河川を包括した窒素・炭素循環の多地点同時観測を行っています。その結果を解析し、大気から森林への窒素負荷の空間分布を評価するとともに、窒素負荷と渓流水質の関係に基づいて窒素飽和の進行メカニズムを解明します。さらに、窒素負荷の度合いに応じて樹木や土壌の炭素蓄積機能がどのように変化するかを明らかにすることを目指します。

<関連プロジェクト>
・科研費基盤研究(B)(一般)「森林源流域から進行する窒素飽和メカニズムの解明と森林炭素蓄積能力への影響評価」(研究代表者:堅田元喜)

林内雨観測
水質観測

3.大気陸域環境科学に関する学際研究の推進

堅田研究室では、地球・地域環境共創機構(GLEC)に参加する茨城大学の教員や国内外の研究機関、企業等と共同することにより、単独の学問分野では解決が困難な地球環境問題に対して学問横断的に進めていく「学際研究」も推進しています。

以下に、研究テーマの一例を示します:

・大気アンモニアの揮発沈着が及ぼす茨城県霞ケ浦流域への影響評価(連携先:茨城大学農学部・広域水圏環境科学教育研究センター、茨城県霞ケ浦環境科学センター ほか)
・産学連携共同研究「クズプロジェクト」(茨城大学 x NEXCO東日本)
・ヨーロッパアルプスの牧草地における水・炭素循環の解明(連携先:カールスルーエ工科大学、ドイツ)
・スペインの半乾燥サバンナにおける露の水資源としての重要性の評価(連携先:マックス・プランク研究所、ドイツ)
・北極陸域モデル相互比較プロジェクト(GTMIP)における雪・土壌凍結・炭素循環の解明(連携先:国立極地研究所、海洋研究開発機構 ほか)
・放射性エアロゾルの大気再飛散と大気植生間の循環の解明(連携先:茨城大学理学部、気象研究所 ほか)
・局所域高分解能大気拡散モデルを用いた森林の乾性沈着過程の解明(連携先:日本原子力研究開発機構)
・放射性ヨウ素をトレーサーにした全球大気拡散過程の解明(連携先:日本原子力研究開発機構)

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